封印の虹 Vivid army
「桃心、助ける方法はきっとあるよ。まずは、その白旗を振ってみよう」

愛恩の言葉で、するべきことを思い出した。私は白旗に力を込めて振る。光の粒は、前より光っていた。オレガノさんが、特殊な機械で診る。なんだか、今ならいけそうな気がする。

でも、治ってはいなかった。

「残念……でも、今度はいけるかもよ」

「もう一回挑戦したら……」

「ごめん。それは出来ない……」

鼠優子の言う通りもう一回挑戦したかったけど、力を使い果たした。明日にならないと出来ないだろう。

「待機している人に報告しないと……」

「あの……お母さんが紅茶を淹れたみたい……白原さん達もどうぞ……」

泣島さんがそう言って案内してくれた。オレガノさんも、報告を早く済ませてここに来た。
紅茶を飲んでいる時、愛恩が泣島さんとモチーフを交換しているのを見た。周りの人が気付いたら怒られると注意したけど、泣島さんは別にいいよと言う。結局、鼠優子と私も交換した。交換したモチーフは白旗に貼った。

「寿命が縮むとしても、忘れたくなかったの。長生きしたとしても、楽しかったことが一度も無い一生なんて嫌なの」

泣島さんは交換したモチーフを見て、嬉しそうに笑って言った。オレガノさんは気付いていたみたいだけど止めなかった。
泣島さんじゃなくて笑実でいいよと言われたので、鼠優子が訳も無く笑実と言い始めた。愛恩が、しつこいよと止めたけど笑実はそう呼ばれるのは嬉しそうだった。

帰る時、3人でまた会おうと言った。笑実はお母さんに見つからないように小さく手を振っていた。

帰ってきた後、次の任務は大規模な討伐作戦であることが知らされた。

「ラストを全滅させる気持ちで頑張ってくれ」

何も知らない鋼打隊長がそう言う。でも、本当に全滅させたら笑実は……
軍人としての私は、早くラストを討伐しなければならない。でも、笑実の友達としての私はもう少し待ってと思う。

白旗に貼られたモチーフが見えた。そうだ、まだ時間がある。だから、戦いが終わる前に治せるようにすればいいんだ。その調子で、全員治してしまえばいい。
急には出来なくても、この悲しい世界を変えて見せる!
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