気まぐれイケメン上司に振り回されてます！

１．適当なカレの御守り

――さて、今日こそは逃がさないようにしないと。

わたしは自分の腕時計を確認して短く息を吐いた。

昼夜問わず人々が忙しないオフィス街の中心にある十七階建てのビル。その十一階のフロアが、わたし、朝本 春絵《あさもと はるえ》の働く広告デザイン会社〈ＭＡＲＫ ＬＩＮＫ〉のオフィス。

大学卒業後、この会社に就職して三年目になる。
ゆるりとパーマのかかった栗色の髪をひとつに束ねて、スキニージーンズとブラウス、カーディガンがワークスタイル。
どちらかというと童顔で女性の色気なんていうものはないけれど、元気はいっぱいあると思う。

将来はアートディレクターになりたいと思っているわたしは、今のところグラフィックデザイナー……のアシスタント業務が多い。

「そろそろお願いします、朝本さん」

「わかりました」

同僚の男性に声をかけられて、自分のデスクを立つ。

空が夕焼け色に染まる頃、わたしは彼を捕まえて外に出さないようにしなくてはいけない。