気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
頬を赤くしていたわたしは、一瞬なんのことだかわからなかった。
けれど、景さんの方を向いて彼が持っているものを見た瞬間、絶叫する。

「あーっ!」

「いいよね、カレーパン貰っても。だって焼きそばパンとおにぎりもあるし」

どうやら、さっきの中腰の姿勢はわたしのコンビニ袋を覗いていたからだったらしい。
カレーパンを抜き取ってしたり顔の景さんに、なんてあざとい人なんだと、わたしは頭を抱えたくなった。

「ダメです、返してください! わたしのカレーパン!」

「やだ。今度、俺が美味しいランチでもご馳走してあげるからさあ、いいだろ?」

「そんな軽い言い方、ご馳走する気全然ないですよね!?」

「あっはっはっは」

「ちょっ、待って……!」

逃げていく景さんに、カレーパン!と叫びたかったけれど、さすがに他の社員たちの目が気になって追いかけることができず。

ああ……わたしのカレーパンが……。食べるのを楽しみにしていたのに。

自分の作業ルームへ入っていった景さんを、唇を噛みながら見ていると、周りにいた社員から『ふたりとも仲がいいよね』と言われてしまい、とても恥ずかしい。

しかも『吉葉さんについていけるのは、朝本さんしかいないよね』という言葉も付け足されて、わたしは困りながら笑うしかなかった。

うれしいような照れ臭さいような、そんな気持ちが湧き上がってきてしまい、カレーパンを奪われてショックなのに顔の赤みが増しているような気がした――。
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