気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「だってさ、春ちゃんしかいないよな、俺の仕事についてきてくれるの」

それは、あれだ、“一緒に仕事をする人間として”好きっていうか、相性がいいというか、そういうことを言っているんだよね。

我に返って、動揺してしまった自分が恥ずかしくなる。
仕事の関係以外のなにかが生まれるなんてことありえないのに、わたしったら!

仕事では、一番近い存在。
わたしはそれでいいと思っている。だから仕事仲間としてわたしのことを認めてくれているのならうれしい。

だけど、もっと違う理由で景さんのそばにいたいって思う自分が心の隅にいる。
ふと胸に浮かんだ切なさを、取り出して捨てたいと思った。

いつもわたしの言うことに軽い返事をして、調子のいいことばかりを言って、隙をついて逃げていく景さん。

わたしが好きっていったら、景さんはどう思うかな。なんて返してくるのだろう?
聞こえなかったフリをして、逃げて、次の日なにもなかったかのような態度なのかな。それとも――。

やっぱり、こうして近くにいられる関係を壊したくない。だから、今のままがいい。この距離で十分だ。
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