気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
材料も少ないので、手際よく調理を進めていく。
お肉を焼き終えて卵スープの味を確かめていると、景さんがキッチンへ再びやってきた。

「いい匂いがしたから覗きに来たんだけど、もうできるの?」

「はい、あとはご飯が炊ければ」

「へえ、早いな」

景さんは感心したような顔をしているけれど、味が好みに合うかどうかはわからないから不安。

大丈夫かなあ、とお肉とスープを見ているとご飯が炊きあがる音がした。

「食器を出すよ」

「はい、お願いします」

用意してもらったふたり分のお皿にお肉を盛り付け、卵スープとご飯もよそる。
景さんと一緒にダイニングテーブルへすべて運んで向かい合って座った。

なんとかできたよ、ご飯。

「こういう食事は久々だ。いただきます」

景さんはまずスープを飲みはじめたけれど、心配なのはお肉の方だ。

「うん、美味い」

「そ、そうですか、よかったです」

スープはコンソメの素があったから、よほどのことがない限り味がおかしくなることはないだろう。
次に景さんがお肉を口へ運んで、どうか大丈夫でありますように、と見守っていたのだけど……お肉を食べた景さんはお皿を眺めたまま動かなくなってしまった。
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