気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「あ、なんか……」

「えっ!? やっぱり、味がおかしいですか!?」

「いや、なんていうか……ほっとする味」

「ほっとする味?」

「こういう味は外じゃ食べられないよな。家庭的な味で、美味しいよ」

お肉を見つめながらやわらかく微笑んだ景さんに、ぽうっと胸が温かくなる。

彼は調子のいいことを言うけれど、今の言葉はお世辞とかではなく本当にそう思ってくれたのだろうなと感じた。

だからうれしくて、はにかんだ後わたしも食べはじめた。

「そういえばこの前、美味しいランチでもご馳走するって俺言ったよな。よかった、食べられて」

「待ってください、時間的にランチじゃなくてディナーだし、これ全部わたしが作ったんですよ!」

「材料費は俺だろ?」

「冷蔵庫に余っていたものじゃないですかっ」

「それでも、俺が買ってるし」

それは確かにそうだけど、ご馳走するという彼の発言とこの食事を一緒にするのは違うよね?
腑に落ちないと思っているわたしの目の前で、景さんはどんどん食べていく。

「春ちゃん食べないの? なら、俺が貰っちゃうよ」

「絶対にあげません!」

箸を伸ばした景さんから、わたしはお肉のお皿を遠ざけた。
カレーパンは奪われてしまったけれど、これは絶対に渡さない!
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