気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
そうだったの? 景さんは、わたしのことを考えて峯川さんを怒らせるようなことはしないでほしいと言ったのだろうか。

「まあ、本人から聞いたわけではないから真意はわからない。俺がはっきり言えることは、お前に避けられている吉葉の調子がおかしいってことだ。いつも以上に気だるそうだぞ。あれはお前が作業ルームに来なくて寂しいんだろ」

仲良くしてやれよ、とからかうような賀上さんに、わたしは困りながら小さくうなずいた。

賀上さんの話を聞いて、気にして胸がチクチクしていたものが和らいだように思う。

さっき悲しそうに見えた景さんの瞳を思い出して、彼に悪いことをしたなと考えていると、賀上さんの上着のポケットに入っているスマートフォンが鳴りだした。
賀上さんはすっと立ち上がる。

「悪い、そろそろ行く」

「はい、すみませんでした。……賀上さん、ありがとうございます」

わたしも立ち上がって軽く頭を下げると賀上さんは小さく口許を緩め、ドアから出ていくと同時にスマートフォンを耳に当てながら去っていった。

ひとりミーティングルームに残ったわたしは、賀上さんの話や景さんの言葉を思い返して、少しの間ぼうっとしてからデスクへ戻って仕事をはじめた。
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