気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「ああ、もう。しょうがないな」

困った顔をしながら立ち上がった景さんは、わたしの脇の下に手を入れると、持ち上げるようにして立たせた。

「疲れて情緒不安定になったんじゃないの?」

「そ、そんなこと……」

「さっさと寝て気持ち整えてくれ」

景さんはわたしの肩を抱くようにして歩き出し、そのままいつも景さんがいる作業ルームへわたしを連れていく。

景さんからしているシャンプーの良い香りが、さらに強くなった。

そしてわたしをソファに座らせると、景さんも横になるときに使っているのか、タオルケットを持ってきてくれてわたしの膝にかけてくれた。

「ありがとう、ございます」

「まだ泣いてるの?」

「っ……」

目元を押さえるわたしの隣に景さんが座った。
視線を感じてそっと横を向くと、彼がわたしを静かに見つめている。

「……あのさ、夜遅いんだよ」

「は、はい、そうです」

「ただでさえふたりきで……ったくさあ、もう。ムラッとするからやめてくれないかな」

「……へ?」

わたしは鼻を詰まらせながら言葉の意味を考える。
そして理解したとき、頬が熱くなるのを感じた。

いつもの軽い冗談だよね?
そう思って景さんを見ていると、彼は項垂れた。
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