気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
覆いかぶさっていた景さんは離れて、タオルケットをわたしのお腹まで掛かるように直すと、作業ルームから出て行った。

パタン、と閉まったドアを見つめたまま、今起こった出来事を思い出す。

わたし、景さんとキスしちゃった……。
静まり返った部屋の中で、ぶわっと全身が熱くなった。

一体どうしちゃったの? なんでキスなんか。
いつもの冗談とは違い過ぎて、本当にキスをしたのかと指先で唇に触れてみた。

そうすると、よみがえってくる。景さんと唇を重ねたときの、あのしっとりとした雰囲気。

離れた後の切なくて悩ましい、色気のある景さん。

どうしよう……どうしよう……。

こんな状態で眠れるわけがない。

わたしはタオルケットで顔を隠して、キスのことを思い出さないようにしようとしたけど、何度も浮かんでしまって結局仮眠なんてまったくできなかった――。



景さんが残りの作業を進めてくれたおかげで、朝一番に賀上さんに見てもらった後、クライアントに確認のためのデザインを送ることができた。

休んでてもいいと言われたのに一睡もできず、徹夜のような状態になってしまったので、午後に早めの帰宅をさせてもらった。

同じく寝ていないだろう景さんも『今日は家で仕事進めておく』と、帰っていった。

自宅に着いて、眠くて限界だと体が訴えているのに、昨晩のことでドキドキして眠りに落ちることができない。
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