気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
おどけているけれど、気持ちはちゃんとあるんだって伝わってくる。

「……いいじゃん。恋人になるんだから、好きってたくさん言いながら抱かせてよ」

「抱っ……!? こ、ここ会社ですから!」

「わかってる、こんなところではしないって。今のは予告」

「予告……!?」

ドキドキして固まるわたしの腰を抱いて引き寄せた景さんの唇が、耳元を掠る。

「春ちゃんがはじめて俺の家に来たとき、襲いたくて仕方なかったって、あれ半分本気だったからな」

「え……?」

「春ちゃんはさ、『仕事で来たんですから』なんて平然としてたけど」

「あ、あれはそう思うようにしていて、わたしだって、景さんの部屋だと思ってそわそわしていましたから! 景さんのこと、ずっと好きだったし……」

「俺だってずっと、春ちゃんのこと気に入ってたよ」

わたしと目線を合わせた景さんが意外にも真剣だから、胸がキュンとした。
うれしい。景さんに、そう想っていてもらえたなんて。

わたしは、景さんの前髪にそっと触れた。

「春ちゃん、春……春絵」

囁かれた名前に照れと、ちょっとだけ切なさが交じっているように感じて、求められているって実感する。

「好きだよ」

景さんがそう言った瞬間にはもう、わたしは彼に抱きついていた。

わたしも、景さんが好き。ずっと、好きだったんだよ――。

「……俺の部屋、来るよね?」

彼の甘い声に、わたしはそっとうなずいた。
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