幼なじみの隣で不器用な恋を


「俺のこと、覚えてる…よな?」


「えっ…」


少し不安げに訊ねられた私は、ドクンッ…と鼓動が波打った。


聞き間違いなんかじゃない…。


“花奏”って、確かに呼んだ…。


私のことを名前で呼ぶ男の子は、一人だけ…。






「ま、眞紘…くん?」




ぎこちなく言葉にする。


途端に男の子はホッとしたような、少し照れくさそうな笑みを浮かべた。


「良かった、忘れられてなくて…。」


夢でも幻でもない…。


本当に、眞紘くんなんだ…。


「久しぶり、花奏。」


声変わりしたのか、少し低くなった声。


幼さがなくなり、大人っぽくなった顔つきや体型。


でも、くっきりした二重の目や、少し…くせっ毛な黒髪は、小学生の頃と変わってなくて…


胸がいっぱいになった。





< 11 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop