幼なじみの隣で不器用な恋を
「眞紘くん、友達のところに行って来なよ!」
私はニコッと笑顔で声を掛ける。
「今日…会わなかったら、今度は…いつ会えるか分からないんだよ?せっかくの機会だし、話せる時に話した方がいいよ。」
「花奏……」
「もうすぐ始まる短距離は予選だし、なっちゃんなら…絶対に11時からの決勝までいけるから。ねっ、矢口くん。」
「ああ。まあ、夏波なら大丈夫だろ。」
「だから、眞紘くん……」
そこまで口にしたところで、眞紘くんは私の頭をポンポンと撫でた。
「サンキュ、花奏。んじゃ、ちょっと友達に会って来る。決勝始まる前には戻るから。」
コクンと頷くと、牧田さんは掴んでいた眞紘くんの腕を軽く引っ張る。
「それじゃあ、ヒロ…行こ?」
「あ、ああ…。」
二人は足早に競技場の出口へ。
私は、その後ろ姿をモヤモヤした気持ちを抱きながら見つめていた。