幼なじみの隣で不器用な恋を
「せっかく会えたんだし、もう少し話そうぜ?」
「ごめんな。短距離の決勝が始まるまでに戻る約束してるんだ。決勝の応援、ちゃんとしたいから…。」
ベンチから立ち上がる俺に合わせて、タツも立ち上がった。
「あのさ、これからヒロが応援しに行く人って“花奏ちゃん”って子?」
「えっ!?なっ、なんで…名前っ……」
予想もしなかったタツの言葉に目を見開く。
つーか、なんでコイツ…花奏のこと知ってんだ?
俺、名前どころか幼なじみが居ることすら話したことねぇのに…。
「その反応ってことは、図星か?」
「いや、応援すんのは…俺と花奏の共通の友達。それより、どうしてタツが花奏の名前を知ってるんだよ。」
「だって、前に…ヒロが休み時間にボーッとしてる時、“花奏、元気かな”って呟いてたことあったから。それに、バスケの大会があった時だって、帰りのバスの中で“花奏”って寝言を言ってたことあったし。」
ニヤリと話すタツに、たちまち顔が熱くなった。