幼なじみの隣で不器用な恋を
振り向くと、こちらに駆け寄って来る牧田の姿が目に映った。
「タツとの話、終わったんだね…。もういいの?」
「ああ。タツは、まだ話したいこと色々とありそうだったんだけど、俺…友達の出る決勝の時間が近付いてきたから、終わらせてきたんだ…。」
「そっか…。」
小さく呟いた牧田は、周りをキョロキョロと見回す。
「牧田、どうかした?」
そんな行動を不思議に思っていると、牧田は俺の手首の辺りをギュッと掴んだ。
「競技場に戻る前に、少しだけ時間をちょうだい?」
「えっ?」
「どうしても、ヒロに話しておきたいことがあるの…。ここだと周りに人が多いから、場所…変えたい。」
競技場とは反対方向に歩き出す牧田。
俺の手首を掴んだまま、体育館の裏手へと進んでいく。
人目を避けたい話って、何だろう?
今まで牧田と会話したことは何度もあるけど、こんなこと初めてだ。