幼なじみの隣で不器用な恋を
その後、殆ど眞紘くんの話題で持ちきりだった部活も終わり、帰り支度を整えた私は、カップケーキの入った小さな紙袋を手に、足早に調理室から出た。
下駄箱のところで待ってる…って言ってたっけ。
だいぶ待たせちゃったよね…。
急げ、急げ…。
焦りながら、昇降口のところまでやってきた時だった。
「…結城くん、本当にカッコいいのね~!間近で見たの初めてだから、感激しちゃった…!」
「は?」
1学年の下駄箱の方から聞こえてきた嬉しそうな女の子と呆れたような眞紘くんの声に足を止める。
誰かと、話してる…?
音を立てないようにゆっくりと近付く。
隣の下駄箱に背中をピタリとくっつけて息を潜めた。
「ごめんね、急に話しかけたりして。私、3年1組の谷川 まりあ。よろしくね。」
えっ…!?
谷川先輩って、確か…女の子も憧れるぐらいの美人の先輩じゃなかったっけ…。
驚きと同時に、胸がざわつき始めた。