幼なじみの隣で不器用な恋を
「別に自己紹介して欲しいなんて、言ってないんですけど。それで、俺に何か用ですか?」
声を弾ませる先輩とは対照的に、淡々と棒読みのように話す眞紘くん。
溜め息も聞こえてきた。
「思ってたよりもクールなんだね。そういうところもカッコいいなぁ…。」
先輩はクスッと笑ってから、言葉を続ける。
「私ね、結城くんのこと…好きなの。だから、付き合って欲しいなぁ…って思って。」
甘くて可愛らしい声が響いてきて、私の心臓はドクンと嫌な音をたてて鳴った。
なんとなく…
ううん、絶対に告白するんだろうな…って思ってた。
谷川先輩、眞紘くんのことが好きなんだ…。
ズキズキと胸が痛むのを感じていると、大きな溜め息が聞こえた。
「俺のこと、何も知らないくせに…よく軽々しく“好き”とか言えますね。」
「えっ…」
「俺、今…幼なじみと付き合ってるんです。ずっと想い続けてきた、大好きな幼なじみと。だから、先輩の気持ちには応えられません。」
眞紘くんは冷たく言い放つ。
「嘘、でしょ…?」
先輩の少し震えた声は、戸惑いの色が滲んでいた。