幼なじみの隣で不器用な恋を
「嘘じゃないですから。それより、もう話は終わりましたよね?俺、彼女待ってるんで…消えてくれませんか?」
「………っ…」
涙を啜るような音が聞こえた後、谷川先輩は廊下を走って、教室の方に行ってしまった。
眞紘くんのあんなに冷たい声、初めて聞いた…。
少し怖いくらいだったな…。
こんな空気の中じゃ、出て行きにくいよ…。
気まずさを感じていた、その時。
“バサッ”
手に持っていたカップケーキ入りの紙袋を落としてしまった私。
静かな場所に音が響く。
もちろん、その音に眞紘くんが反応しないわけがなくて…。
足音が、こちらに向かって近付いてきた。
「えっ、花奏…!?」
名前を呼ばれてビクッと肩が上がる。
ゆっくり視線を動かすと、驚いて目を見開いている眞紘くんの姿が目に映った。
「いつの間に、ここに…?」
「す、少し前から……」
「じゃあ、もしかして今の話…聞いてた?」
コクンと頷く。
「ぬ、盗み聞きみたいなことして、ごめんなさ……」
全て言い終わる前に、眞紘くんにギュッと抱きしめられた。