幼なじみの隣で不器用な恋を

「嘘じゃないですから。それより、もう話は終わりましたよね?俺、彼女待ってるんで…消えてくれませんか?」


「………っ…」


涙を啜るような音が聞こえた後、谷川先輩は廊下を走って、教室の方に行ってしまった。


眞紘くんのあんなに冷たい声、初めて聞いた…。


少し怖いくらいだったな…。


こんな空気の中じゃ、出て行きにくいよ…。


気まずさを感じていた、その時。


“バサッ”


手に持っていたカップケーキ入りの紙袋を落としてしまった私。


静かな場所に音が響く。


もちろん、その音に眞紘くんが反応しないわけがなくて…。


足音が、こちらに向かって近付いてきた。


「えっ、花奏…!?」


名前を呼ばれてビクッと肩が上がる。


ゆっくり視線を動かすと、驚いて目を見開いている眞紘くんの姿が目に映った。


「いつの間に、ここに…?」


「す、少し前から……」


「じゃあ、もしかして今の話…聞いてた?」


コクンと頷く。


「ぬ、盗み聞きみたいなことして、ごめんなさ……」


全て言い終わる前に、眞紘くんにギュッと抱きしめられた。











< 192 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop