幼なじみの隣で不器用な恋を
「なんで謝ろうとしてんだよ。花奏は何も悪くねぇだろ?」
大きくて温かい手がポンポンと頭を撫でる。
優しく、何度も。
さっきまで抱いていた気まずさが払拭されていくのを感じていると、遠くから女子生徒たちの喋り声が聞こえてきて…。
私は、勢いよく顔を上げて眞紘くんを見つめた。
「ま、眞紘くん!誰か来るよ…!ここ、誰もいない屋上じゃないし、下駄箱だし、この状況を見られたら…」
悲鳴に包まれることは間違いない。
アタフタする私に対して、眞紘くんに焦りの色は全く無い。
「大丈夫だよ。今、離すから。」
落ち着いた様子で私の体を離した眞紘くんは、その場にしゃがみ込む。
そして、私が落とした小さな紙袋を拾った。
「これ、何…?」
「あっ、あの…部活で作ったカップケーキ…。眞紘くんに食べて貰いたいなぁ…と思って。」
「俺に!?やった…!すげぇ嬉しい!」
花が咲いたかのように満面の笑みを浮かべる眞紘くん。
さっき、谷川先輩に冷たい声で話していたのが嘘のようだ。