幼なじみの隣で不器用な恋を

卒業式の日。


思いきって、告白しようと思った。


この場所から離れる前に、自分の気持ちを伝えておきたかったから。


だけど、言い出せなかった。


あの時、花奏に言われたんだよな…。


“遠く離れても、私たちは…ずっと仲良しの幼なじみだよ。”って…。


まだ恋に気付いてない頃の俺だったら、その言葉に元気を貰えたかもしれない…。


嬉しかったかもしれない。


でも、恋に気付いた俺にとっては…胸に重く響いた。


花奏の中で、俺は…あくまでも幼なじみ。


きっと、それ以上でもそれ以下でもない。


そう思ったら、“好き”だなんて言えなくなっていた。


他愛ない話を少しだけして、ぎこちなく花奏とサヨナラをした。


もう…この街に戻ってくることもない。


花奏への気持ちは、諦めよう…。


新しい街へ向かう車の中で、そんな風に思ってた………はずなのに。


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