幼なじみの隣で不器用な恋を
「い、嫌…じゃないよ。」
「えっ…」
「突然のことで、心臓が止まりそうなほどビックリしたんだけど、別に嫌とか…そういうわけじゃないから……」
今の、マジ…?
俯く花奏の顔を覗き込んだ俺は、目を見開いた。
「花奏、顔……赤い。」
というか、リンゴのように真っ赤だ。
しかも、耳まで。
「あっ、あまり見ないで?は、恥ずかしいから…」
花奏は、手に提げていた本屋の袋で顔を隠すと、少し後退りをする。
「えっと、私…先に行くね。それじゃあ、またね。」
「お、おう。またな…。」
クルリと素早く俺に背を向けたかと思うと、慌ただしく走って行ってしまった。
抱きしめたこと、嫌じゃなかったのか…。
まあ、きっと…今のは極端論だよな。
どちらかと言えば、嫌じゃない…みたいな感じだろう。
そう解釈しつつも、次第に緩んでいく頬。
軽やかに弾む鼓動が体中に響いた。