幼なじみの隣で不器用な恋を
眞紘くんは、嬉しさのあまり抱きしめた…みたいな感じのことを言ってたじゃない。
それ以外の感情なんてない。
ただ、私が勝手にドキドキしてるだけ。
だから、もっと冷静にならなくちゃ。
両手でペシペシと頬を叩いて、大きく深呼吸をする。
平常心だ、平常心…。
心に向かって何度も言い聞かせながら、朝食を済ませる。
部屋でゆっくりと支度を調えた後、トートバッグに二人分のお弁当を入れて、家を出た。
スッキリとした青空の下、爽やかな風が吹き抜ける。
心地良さを感じながら歩き出そうとした時、眞紘くんがこちらに向かって走ってくるのが目に映った。
「花奏、おはよ!」
あっという間に私の前までやって来た眞紘くんは、明るい笑顔を浮かべていて…
「お、おはよ…眞紘くん。」
落ち着きを取り戻したはずの心が、また慌ただしく鳴り始めた。