密星-mitsuboshi-
疑惑
日曜日
林田は手に長細い紙袋をさげて駅前から続くバス通りを歩いていた
住宅街に入って少し歩くと出会う三差路の左の道を進むと
すぐに大きなマンションが見えてくる
エントランスに入りエレベーターに乗って3Fで降りた
黒いドアの前で、インターホンを鳴らすとすぐにドアが開いた
「いらっしゃい!待ってたよ」
明るい声で出迎えたのは家主の渡瀬ではなく、腕まくりをしてエプロンをつけた篠山里緒だった
「すいません、遅くなりました」
「入って!もうみんな始めてるわよ」
玄関に入ると男物の靴と女物のブーツやパンプスが几帳面に揃えられていた
玄関からまっすぐ廊下を歩き、突き当たりのドアを開けると
広いリビングダイニングが現れる
間取り自体は1LDKだがこのリビングダイニングがやたらと広い
中央にソファセットがあるが、すでに渡瀬と管理部の男性社員2人、
そして里緒が連れてきたファイナンス部の女性社員2人が真ん中のテーブルを囲んでいた
「おぉ林田きたか」
渡瀬はそう言って缶ビールを林田に放った
「すいません遅れて。
いただきます」
林田は渡瀬の横に座り、受け取った缶ビールを開けた
「じゃあもう一度乾杯しよう」
渡瀬の一言で全員が手持ちのグラスや缶ビールを顔の高さまで持ち上げる
「みんな今日はたくさん飲んでって。
乾杯!」
掛け声で各々左右や向かいにあるグラスや缶を鳴り合わせた
手に持った缶ビールを一気に飲みほした林田は
「いやー昼間っからビールいいっすね!
うまい!
家だといっつも発泡酒ですからねー
やっぱ生は違うわー」
と空の缶をまじまじと見て頷いてた
「お前ホントにビール好きだね。
俺は日本酒の方がいいけどな」
林田は渡瀬のその言葉に持ってきた紙袋を差し出した
「そう言うと思って!
課長に差し入れ持ってきました
一緒に飲みましょうよ♪」
渡瀬は紙袋から出した長方形の箱を見て顔色が変わった
「…水歌?」
「はい♪
これ、前に話した誕生日プレゼントで
もらったものです」
「…あぁ、お前と仲いい審査部のこが
探してくれたって言ってた?」
「そうです!
せっかくだから渡瀬さんと一緒に
飲もうと思って。
間野…渡瀬さんとぶつかった子ですけど、
間野に水歌を教えてくれたの渡瀬さん
って話したんですよ
それで渡瀬さんの家で家飲みするから
その時に持っていっていいかって聞いたら
せっかくの水歌だから楽しんで飲ん
だらいいって言ってくれたんで♪」
林田の言葉に渡瀬の顔色がさらに変わった
「お前っ、家飲みのこと話したの?!」
「えっ?言いましたけど…?」
「…誰が来るかも?!」
「まぁ、だいたいですけど…
あ、他部署に言ったらまずかったですか?
…でも間野達は言っても大丈夫だと思い
ますけど…」
「…あぁ、いや、別になんでもない。
そうだな。
お前が仲いい相手なら問題ないな」
渡瀬は早紀がこの飲み会のことを知っていても自分に何も言わなかったことを想った
渡瀬は早紀に、余計な心配をかけまいとこの日のことを黙っていた
耐えると言った早紀の言葉が頭をよぎる
当然里緒がくることも、女性社員を連れてくることも知っていたはず
きっとこの瞬間も、1人でこの場のことを思っているだろうと渡瀬の心が痛んだ
「俺ちょっとグラス取ってきますね」
林田はそう言って立ち上がり、食器棚のあるキッチンへ向かった
「林田どうしたの?」
ツマミの用意をしている里緒がキョロキョロしている林田に気づいた
「日本酒飲もうと思って
グラスを取りに来ました」
「あぁ、それじゃグラスは私が持って
行くから、林田はそこにある料理を
みんなのところに運んでくれる?」
両手の塞がっている里緒が顎で指したダイニングテーブルの上には
美味しそうな料理が綺麗に盛り付けられていた皿が何枚か並べられていた
「おぉ、旨そう♪
わかりました~持って行きます」
林田は両手に皿を持ち、リビングへ運び始めた
林田は手に長細い紙袋をさげて駅前から続くバス通りを歩いていた
住宅街に入って少し歩くと出会う三差路の左の道を進むと
すぐに大きなマンションが見えてくる
エントランスに入りエレベーターに乗って3Fで降りた
黒いドアの前で、インターホンを鳴らすとすぐにドアが開いた
「いらっしゃい!待ってたよ」
明るい声で出迎えたのは家主の渡瀬ではなく、腕まくりをしてエプロンをつけた篠山里緒だった
「すいません、遅くなりました」
「入って!もうみんな始めてるわよ」
玄関に入ると男物の靴と女物のブーツやパンプスが几帳面に揃えられていた
玄関からまっすぐ廊下を歩き、突き当たりのドアを開けると
広いリビングダイニングが現れる
間取り自体は1LDKだがこのリビングダイニングがやたらと広い
中央にソファセットがあるが、すでに渡瀬と管理部の男性社員2人、
そして里緒が連れてきたファイナンス部の女性社員2人が真ん中のテーブルを囲んでいた
「おぉ林田きたか」
渡瀬はそう言って缶ビールを林田に放った
「すいません遅れて。
いただきます」
林田は渡瀬の横に座り、受け取った缶ビールを開けた
「じゃあもう一度乾杯しよう」
渡瀬の一言で全員が手持ちのグラスや缶ビールを顔の高さまで持ち上げる
「みんな今日はたくさん飲んでって。
乾杯!」
掛け声で各々左右や向かいにあるグラスや缶を鳴り合わせた
手に持った缶ビールを一気に飲みほした林田は
「いやー昼間っからビールいいっすね!
うまい!
家だといっつも発泡酒ですからねー
やっぱ生は違うわー」
と空の缶をまじまじと見て頷いてた
「お前ホントにビール好きだね。
俺は日本酒の方がいいけどな」
林田は渡瀬のその言葉に持ってきた紙袋を差し出した
「そう言うと思って!
課長に差し入れ持ってきました
一緒に飲みましょうよ♪」
渡瀬は紙袋から出した長方形の箱を見て顔色が変わった
「…水歌?」
「はい♪
これ、前に話した誕生日プレゼントで
もらったものです」
「…あぁ、お前と仲いい審査部のこが
探してくれたって言ってた?」
「そうです!
せっかくだから渡瀬さんと一緒に
飲もうと思って。
間野…渡瀬さんとぶつかった子ですけど、
間野に水歌を教えてくれたの渡瀬さん
って話したんですよ
それで渡瀬さんの家で家飲みするから
その時に持っていっていいかって聞いたら
せっかくの水歌だから楽しんで飲ん
だらいいって言ってくれたんで♪」
林田の言葉に渡瀬の顔色がさらに変わった
「お前っ、家飲みのこと話したの?!」
「えっ?言いましたけど…?」
「…誰が来るかも?!」
「まぁ、だいたいですけど…
あ、他部署に言ったらまずかったですか?
…でも間野達は言っても大丈夫だと思い
ますけど…」
「…あぁ、いや、別になんでもない。
そうだな。
お前が仲いい相手なら問題ないな」
渡瀬は早紀がこの飲み会のことを知っていても自分に何も言わなかったことを想った
渡瀬は早紀に、余計な心配をかけまいとこの日のことを黙っていた
耐えると言った早紀の言葉が頭をよぎる
当然里緒がくることも、女性社員を連れてくることも知っていたはず
きっとこの瞬間も、1人でこの場のことを思っているだろうと渡瀬の心が痛んだ
「俺ちょっとグラス取ってきますね」
林田はそう言って立ち上がり、食器棚のあるキッチンへ向かった
「林田どうしたの?」
ツマミの用意をしている里緒がキョロキョロしている林田に気づいた
「日本酒飲もうと思って
グラスを取りに来ました」
「あぁ、それじゃグラスは私が持って
行くから、林田はそこにある料理を
みんなのところに運んでくれる?」
両手の塞がっている里緒が顎で指したダイニングテーブルの上には
美味しそうな料理が綺麗に盛り付けられていた皿が何枚か並べられていた
「おぉ、旨そう♪
わかりました~持って行きます」
林田は両手に皿を持ち、リビングへ運び始めた