密星-mitsuboshi-
三木がノリと草野球の件で話し始めたとき、
早紀のスマホがバッグの中で震えた
そっとバッグを開き、中でスマホの画面を確認すると
渡瀬からのメールだった
“どこで飲んでる?大丈夫か?”
そのメールに返信しようと画面に触れたとき
「なぁ、お嬢さんも今度野球見においで
ギャラリー多い方がみんなやる気が
違うんだよなー」
とノリがビール瓶をもって三木と早紀の間にちょっとよろけながら入ってきた
ニヤリと笑いながらノリはビール瓶を早紀の前に突き出した
「あ、ありがとうございます
いただきます」
早紀は残っていたビールを飲み干しグラスを空にしてノリの前に出した
「そうですよ!
是非今度見に来てください!」
三木も嬉しそうにノリの提案に乗っかった
「はいっ、今度見に行きますね」
早紀はノリに笑顔を向けた
バッグの中で開きっぱなしのメールの返信ページに文字を打つ間もなく
またノリのおかしな話がはじまった
それから30分もたった頃から、早紀のバッグが頻繁に震え始めた
振動の長さからメールではなく、それは明らかに電話だった
画面には渡瀬の名前が表示されている
すぐ近くに三木がいるこの状況でさすがに通話することは出来ずにそのままスマホをバッグに戻した
三木と早紀が店を出たのは23時半少し前だった
バッグからスマホを取り出し画面を確認すると
不在着信が7件
全て渡瀬からだった
「こんなに遅くまでつき合わせてしまって
申し訳ありませんでした」
駅までの間を歩きながら三木はすまなそうな顔をしていた
「いえ、楽しかったですホントに。
まだ終電もありますし、
気にしないで下さい」
早紀はそう言って笑顔を向けた
2人が北船橋の地上線のホームに上がった時、
早紀のスマホが震えた
渡瀬からの8回目の着信だった
「あの…電話、
さっきからかかってきてますよね?
出なくて大丈夫ですか?
何か急用だったら大変ですし
僕のことは気にせず出てください」
三木はスマホを気にしている早紀に気を使って笑顔でそう言った
「…すいません
ちょっとだけ失礼します」
早紀は小さく三木に頭を下げて少しだけ三木から離れたところでスマホを耳にあてた
「もしもし」
早紀が声を出したとたん
「お前今どこにおると?!」
思わずスマホを耳から離したくなるほどの渡瀬の怒鳴り声が響いた
「いや、あのっ、
いま北船橋の駅でこれから電車に」
「お前いったい今何時やと思っとるとね?!
今北船橋やったら0時までに
家つかんやろ!」
渡瀬の剣幕は収まらない
その声はスマホを耳から少し放しても十分聞こえるほどだった
「ごめんなさい…
終電までには間に合うから安心して?」
「…今まだ三木と一緒におるんか?」
「今一緒にホームに上がったところだけど
三木さんは市川でおりるから」
「…お前、今すぐ来い」
「え?
来いってどこに」
「いいからそのまま俺の家に来い!
いいな!」
渡瀬はそう言うと一方的に電話を切った
「え、ちょっと!」
声をかけるがすでに画面には通話終了の文字
早紀は通話の切れたスマホ呆然と見つめた
(…家に来いって言われても家の場所知
らないんだけど…)
かけ直してみるがコール音だけが鳴り続け、渡瀬は出なかった
「間野さん?
大丈夫ですか?
何か問題でも起きました?」
三木が心配そうに早紀の顔を覗き込んできた
「あ、いえ別に何でもありません」
急いで笑顔を作るが
「お父さんですか?」
「へ?」
「今の電話。
内容まではわかりませんが、
何か男性が怒鳴っていいたような気が」
「あっ、えーっとそうですね父…ですかね。
ちょっと声が大きな人で
別に怒ってるわけじゃないので
大丈夫です」
音漏れに内容が聞こえていなかったか内心焦りながら三木の言った“お父さん”という存在に乗っかった
「…それならいいのですが
こんな遅くまで若い女性を連れまわして
心配するのは当たり前ですよね
本当にすいません」
「いえいえ!全然大丈夫ですホントに
用があってかけてきただけですから
気にしないでください」
早紀の言葉に心配そうな三木の顔が少しゆるんだ
混雑した電車に乗り込むと、
三木は手すりの近くに早紀を寄せ、周りから壁になるように立った
「今日は本当に楽しかったです
ノリのさんたちに懲りずに
野球も見に来てくださいね」
「懲りるなんてそんなことないですよ
ぜひ野球も見に行きます」
三木の降りる市川駅までは2駅。
約6分ほどでつく。
電車を降りてからも三木は、早紀の乗っている電車が動き出してからも、
ずっと笑顔で手を振り続けていた
早紀のスマホがバッグの中で震えた
そっとバッグを開き、中でスマホの画面を確認すると
渡瀬からのメールだった
“どこで飲んでる?大丈夫か?”
そのメールに返信しようと画面に触れたとき
「なぁ、お嬢さんも今度野球見においで
ギャラリー多い方がみんなやる気が
違うんだよなー」
とノリがビール瓶をもって三木と早紀の間にちょっとよろけながら入ってきた
ニヤリと笑いながらノリはビール瓶を早紀の前に突き出した
「あ、ありがとうございます
いただきます」
早紀は残っていたビールを飲み干しグラスを空にしてノリの前に出した
「そうですよ!
是非今度見に来てください!」
三木も嬉しそうにノリの提案に乗っかった
「はいっ、今度見に行きますね」
早紀はノリに笑顔を向けた
バッグの中で開きっぱなしのメールの返信ページに文字を打つ間もなく
またノリのおかしな話がはじまった
それから30分もたった頃から、早紀のバッグが頻繁に震え始めた
振動の長さからメールではなく、それは明らかに電話だった
画面には渡瀬の名前が表示されている
すぐ近くに三木がいるこの状況でさすがに通話することは出来ずにそのままスマホをバッグに戻した
三木と早紀が店を出たのは23時半少し前だった
バッグからスマホを取り出し画面を確認すると
不在着信が7件
全て渡瀬からだった
「こんなに遅くまでつき合わせてしまって
申し訳ありませんでした」
駅までの間を歩きながら三木はすまなそうな顔をしていた
「いえ、楽しかったですホントに。
まだ終電もありますし、
気にしないで下さい」
早紀はそう言って笑顔を向けた
2人が北船橋の地上線のホームに上がった時、
早紀のスマホが震えた
渡瀬からの8回目の着信だった
「あの…電話、
さっきからかかってきてますよね?
出なくて大丈夫ですか?
何か急用だったら大変ですし
僕のことは気にせず出てください」
三木はスマホを気にしている早紀に気を使って笑顔でそう言った
「…すいません
ちょっとだけ失礼します」
早紀は小さく三木に頭を下げて少しだけ三木から離れたところでスマホを耳にあてた
「もしもし」
早紀が声を出したとたん
「お前今どこにおると?!」
思わずスマホを耳から離したくなるほどの渡瀬の怒鳴り声が響いた
「いや、あのっ、
いま北船橋の駅でこれから電車に」
「お前いったい今何時やと思っとるとね?!
今北船橋やったら0時までに
家つかんやろ!」
渡瀬の剣幕は収まらない
その声はスマホを耳から少し放しても十分聞こえるほどだった
「ごめんなさい…
終電までには間に合うから安心して?」
「…今まだ三木と一緒におるんか?」
「今一緒にホームに上がったところだけど
三木さんは市川でおりるから」
「…お前、今すぐ来い」
「え?
来いってどこに」
「いいからそのまま俺の家に来い!
いいな!」
渡瀬はそう言うと一方的に電話を切った
「え、ちょっと!」
声をかけるがすでに画面には通話終了の文字
早紀は通話の切れたスマホ呆然と見つめた
(…家に来いって言われても家の場所知
らないんだけど…)
かけ直してみるがコール音だけが鳴り続け、渡瀬は出なかった
「間野さん?
大丈夫ですか?
何か問題でも起きました?」
三木が心配そうに早紀の顔を覗き込んできた
「あ、いえ別に何でもありません」
急いで笑顔を作るが
「お父さんですか?」
「へ?」
「今の電話。
内容まではわかりませんが、
何か男性が怒鳴っていいたような気が」
「あっ、えーっとそうですね父…ですかね。
ちょっと声が大きな人で
別に怒ってるわけじゃないので
大丈夫です」
音漏れに内容が聞こえていなかったか内心焦りながら三木の言った“お父さん”という存在に乗っかった
「…それならいいのですが
こんな遅くまで若い女性を連れまわして
心配するのは当たり前ですよね
本当にすいません」
「いえいえ!全然大丈夫ですホントに
用があってかけてきただけですから
気にしないでください」
早紀の言葉に心配そうな三木の顔が少しゆるんだ
混雑した電車に乗り込むと、
三木は手すりの近くに早紀を寄せ、周りから壁になるように立った
「今日は本当に楽しかったです
ノリのさんたちに懲りずに
野球も見に来てくださいね」
「懲りるなんてそんなことないですよ
ぜひ野球も見に行きます」
三木の降りる市川駅までは2駅。
約6分ほどでつく。
電車を降りてからも三木は、早紀の乗っている電車が動き出してからも、
ずっと笑顔で手を振り続けていた