峭峻記
「んで、お前さんがいるのが、この青士部隊ってわけだな。」
蛛猛は、子供に組織の説明をすると、組織図を見せた。
琥蓮組織図
最高位 頭領
首席 筆頭黒士
次席 筆頭紅士
三位 筆頭碧士
以下 黒士部隊
(統率司令部隊。精鋭を『玄武』)
↓
紅士部隊
(実動執行部隊。精鋭を『朱雀』)
碧士部隊
(情報部隊。精鋭を『青龍』)
青士部隊
(見習い)
「お前さんが、目指してる蘇芳の直属紅士は、そんな簡単になれるもんじゃない。まずは、読み書きを覚えてちったあ物事が解る人間になることだ。話はそれからだな。」
子供は頷くと、書物の頁をめくる。
「ああ、それは団服の色分けだな。」
蛛猛は、また子供に説明を始めた。
琥蓮には、団服があり、各部隊をそれぞれ象徴する柄と色で分けられる。
筆頭位、精鋭部隊など高位は、更に位に応じた佩玉(はいぎょく)を身につけている
団服は、正式には、黒衣の上衣と下袴の上に黒士は漆黒、紅士は暗紅、碧士は暗緑、青士は深青の交領袍(こうりょうほう)を着用する。
各部隊を象徴する柄があり、黒士は銀蛇(ぎんだ)、紅士は鳳(おおとり)、碧士は狼、青士は無地としている。
またこれらの各刺士の精鋭部隊は、佩玉をもち、黒士玄武は、玄武が彫られた緑色の佩玉を、紅士朱雀は、朱雀が彫られた紅色の佩玉を、碧士青龍は、青龍が彫られた青色の佩玉を身に付ける。
筆頭位になると、身に付ける佩玉の彫刻が金色になる。
「よくもまぁ、事細かに決められてるよな。」
子供は、蛛猛の言葉に頷く。ふと、蛛猛の腰に下がる佩玉が目に入った。その佩玉の刻印は金。
「その佩玉、貴方は、筆頭碧士様。蛛猛様だったのですね。そうとは知らなくてご免なさい。こんなぼくに教えて頂いて」
子供の言葉に、蛛猛はただ微笑んだ。
琥蓮の筆頭位は佩玉の所持以外、団服の着用は特に義務付けられておらず、その他の刺士も、特に碧士は団服を必ずしも着用する必要はない。というか、邪魔だ。情報部隊は、人に紛れやすいように私服を身に付ける。
「さて、ぼうず。組織の説明はこれくらいにして、もう寝ろ。明日も早いだろ?」
「はい。蛛猛様ありがとうございました。蛛猛様はお優しい方ですね。ぼく、頑張って勉強して賢い強い刺士になってみせます。おやすみなさい。」
蛛猛は、子供の屈託のない笑顔に笑う。
そして、子供が書庫を出ていくのを見つめた。
「刺士になりてぇなんてバカだな。ああいう奴は、刺士に向かねぇ。蘇芳嬢もわかってると思うんだが。なんで拾ってきたんだ。」
琥蓮に入団したものは、まず青士隊に配属され琥蓮の雑用係としてこき扱われながら、あらゆる教養と武術を学ぶ。
そうして、上の部隊に昇格すると任務を与えられるようになる。
青士でいられる期間は10年迄。それまでに、上格のどこかの部隊に昇格しない者は抹消される。
花街の妓生と違い、琥蓮には年季というものはない。
琥蓮は一度入ったら、抜けられない組織。
昇格しなけりゃ生き残れない。
琥蓮での最高指揮官は、頭領であり
すべての実権は頭領に委ねられる。
がしかし、現在の琥蓮は形式が異なる。
本来、各部隊の筆頭格は自軍の指揮統率をとる役目を担うだけなのだが、
琥蓮の現頭領は大の仕事嫌いな風来坊。
現琥蓮頭領は、『桃源郷を探しに行ってくるから、帰るまで後の事は頼んだよ』と言い残し、当時、筆頭黒士だった朱雅に仕事を押し付け数年前に琥蓮からトンズラ、現在年中無休で不在。
以来、朱雅が頭領の職務を兼任している。
つまり、事実上の頭領格として君臨するのが、実年齢25歳の若き頭領名代。
「朱雅が、頭領名代を務めるようになって、もう6年か。」
あっという間だった。
「昔は、武器開発部なんてのも無かったが、朱雅が頭領名代になって琥蓮も大分変わった。」
奴自身も。