貴方の事を奪いに来たの。
大学2回生
ーー夏本番前。
あたしは今、高校の校門の前に立っている。
龍之介くんに彼女が出来た、と聞いてから
一回も訪れていなかった。
会って気持ちが聞きたいーーなんて思ったのは遥か前。
それまで決心がつかなかったあたしのヘタレ具合。
けれど、夏休み前に会っておかなければ
龍之介くんは部活を引退してしまい、会える機会は無くなってしまう。
差し入れも持って来たし、よしっと気合を入れ、
あたしは校内に足を踏み入れた。
前回と同様私服のため、嫌でも目立ってしまうので
一直線にグラウンドに足を向かわせる。
「あれ、百合先輩…?」
「望月くん…!」
グラウンドに向かう途中で見知った顔にホッとする。
望月くんはへらへら笑いながら、あたしの手元を見て、
差し入れっすか⁉︎と喜んだ顔をした。