貴方の事を奪いに来たの。


水道でタオルを濡らし、ズボンを拭いている龍之介くん。

よし、とりあえず、他愛もない話…

他愛もない話をするんだ…!

そう意を決して一歩踏み出し、







「龍之介くん。」







勇気を出し龍之介くんの後ろ姿に声をかければ

ゆっくり振り返った龍之介くんは驚いていて、

呟くように、七瀬先輩…と言った。

そんな龍之介くんを見てあたしは笑顔で、






「卒業、おめでとう。」

「え…あ、ありがとう…ございます…」







未だに動揺を隠せない龍之介くんは

途切れ途切れになりながらも返事をした。


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