貴方の事を奪いに来たの。


仮入部が始まってから数日が経ち、

今日が仮入部期間の最終日となった。

仮入部が始まってからあたしは部活に行くのが楽しみで楽しみで仕方がなかった。

理由は分かっている。

でも認めるわけにはいかない…こんな、一目惚れみたいな…。

そんな事を考えていて難しい顔をしていたからか、







「七瀬さん大丈夫?しんどい?」

「直江くん!大丈夫!ちょっと考え事してただけ!」

「そう?無理しないようにね。」







そう涼しい顔で言って立ち去ってしまった。

あの日からあたしは無意識のうちに彼を目で追っている事がある。

1年生の加藤 龍之介くん。

普段は無気力な雰囲気を纏っていて

たまに笑ったりはするが無表情に近く、眼も生気があまり感じられない…。

でも、部活が始まってしまえば同一人物とは思えないくらい

あの眼が鋭くなる。

サッカーが楽しい、と彼の眼が訴える。

そんな、彼の眼を見ていると

去年みたいな子が入って来ないように頑張ろう、

という考えもすぐに忘れてしまう。




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