貴方の事を奪いに来たの。
告白してきた彼が見えなくなった所で
あたしは我に返り掴んでいた腕を離した。
どうしよう、無理矢理腕引っ張っちゃった。
それに絶対さっきの話聞こえてたよね…。
そう思いながらチラリと龍之介くんを見てみたが
相変わらず無表情で無気力な眼。
一応怒ってはなさそうだけど…とそんな事を悶々と考えていると
「七瀬先輩…あの人…」
「ごめんね…大丈夫だから!明日謝っておくから!」
龍之介くんは少し後ろを振り返りながら
あの男の人を気にかけている感じで遠慮気味に話しかけてきたので
苦笑いをしながら咄嗟にそう返事をしてしまった。
逃げる為とは言え、勝手に龍之介くんを巻き込んでしまった。
絶対…嫌だよね…。
自己嫌悪に陥りながら、それ以降あたしと龍之介くんは
一切何も喋らず、帰路に着いたーー。