貴方の事を奪いに来たの。
嘘だ…あたし、練習中そんなに見てた…?
結構見ないように気をつけてたつもりだったのに…!
「後な、名前。」
「…名前?」
「龍之介の事だけ下の名前で呼んでるだろ?」
佐伯くんにそう言われよくよく考えてみるとそうだ。
同期は勿論、龍之介くん以外の後輩達を下の名前で呼んだ事がない。
確かに、龍之介くんって呼びたいなー、
なんて事を考えて
故意的に呼んだが、他の子に対して誰1人全くそんな事を考えなかった。
…そりゃ、佐伯くんにバレるよね…
と思っていると、佐伯くんはあたしの顔を見て考えている事が分かったのか、
「それも自覚無しかよ。」
「あったよ⁉︎でも考えてみればそうだな…って…」
佐伯くんはまたあたしの返事を聞いて笑っていた。
…楽しそうだな…悔しい…。