貴方の事を奪いに来たの。
日菜子はグラウンドを見ながら、
「本当、馬鹿だよねー。」
「?」
「こんな良い女振るなんてさ。」
そう言いながらあたしの顔を見て、にひっと笑う日菜子。
あたしはそんな日菜子を見て、ありがとう、と伝えた。
「でもさ、まだ好きなんでしょ?」
「…うん。」
「じゃぁ卒業までに一回くらいは話しなさいよ。」
このままじゃ気まずいでしょ?、と眉間に皺を寄せながら言った。
本当は引退してからもちょっとは顔を出そうと思っていたが、
未だに一回も顔を出せていないのは、
もし龍之介くんに気まずい顔をされたり
避けられたりしたら、と思うと傷つくのが目に見えていたからだ。
あたしはグラウンドの龍之介くんを見つめながら、
そうだね、と日菜子に返事をした。
体育でもサッカーをしている時の龍之介くんの眼はやっぱり輝いていて。
あの眼に、惚れたんだーー。