貴方の事を奪いに来たの。


ーー10月後半。




無事テストも終わり放課後、

あたしは進路指導室に足を運んでいた。

まだいまいち何処の大学に行くか決めかねていた。

皆、何処に行くか決めて勉強始めてるよね…

そう思いながら資料を見ていると、






「あれ、七瀬さん?」

「直江くん…。」

「何か久しぶりだね。」






にこにこ笑いながら言う直江くん。

クラスが離れている為、部活を引退した後あまり会う事が無かった。

進路指導室で会うなんて…と思っていると、あたしは直江くんの手元に目がいった。






「資料…。」

「ああ、これ?うん、大学のね。」

「何処に行くか決めてるの?」

「ん?うん、まぁね。七瀬さんは?」







手元に持っている封筒を掲げながら聞いてくる直江くんに、

まだなんだよね…と苦笑いをしながら返す。

その様子を見た直江くんは、ふーん、と少し考えた後、







「留年、しちゃう?」

「へ?」

「そしたらもう1年、一緒にいれるよ?」






あたしは直江くんの言ってる意味が分からず顔をガン見する。



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