自己物語
〜1章 ~

「魔導の力を継ぎつつも、『クロロ』の力を継いだ子が誕生した」
「それは……本当?」
「ああ。」
「その子は指導者になるのかな?それとも、魔導師になるのかな?」
「我々にはわからぬ事。カスフィアに記した我にもわからぬ」
「つまり、カタストロフィア様の知りえない事ですか?」
「ああ。我はそんな事記した記憶がない。そして、世界が変わる一つのきっかけになってしまった」
「そんな……」
「落ち着け、ラザルラ……。我が非物質体となり、世界の預言……カスフィアを変える」
「……大丈夫なのでしょうか」
「大丈夫だ。非物質体となればカスフィアの書き込みも楽になる」
「そうですね。新たにあの子に作らなくては……預言を」
「そうだな……。人の書……『タトロア』に」
「私は精霊。パスルラやリューラを見ています」
「そうだな……。キロロには気をつけてくれ……世界の預言が変わってしまった以上、キロロの復活もあるかもしれぬ」
「もちろんの事です」


【親がわからぬ捨てられ、カタストロフィア教に拾われた金髪の彼女の名は『導師 リュシェア』。古代語では『世界の光』という。魔導師とクロロの力を持った『指導者』なり。
世界を繁栄に導く1人。大人に近づいた頃、仲間共に故郷を離れ悪びれた者を除くだろう。彼女の死は人々に深く影響し、彼女が死んだ事で再び反乱に陥るだろう】

「こんなものか……。悪びれた者……キロロよ復活しないでくれ……。我はリュシェアを見守ろう。彼女の命……尽きるまで。我々は彼女に世界を託さねばならぬのだ」
光をまとったカタストロフィアはウィルビウスの夜空に姿を消した。


「『導師 リュシェア』様!」
と、たくさんの声が上がる。そんな中私『リュシェア』は人々の間を歩き、カタストロフィア教の人々の元へ歩く。
「リュシェア様……これを」
「カルマトトの民達よ、これから私『導師 リュシェア』がカスフィアを詠む……」
と、言うともっと歓声が上がり1層騒がしくなる。
「リュシェア様……このようなところで詠んで大丈夫なものなのでしょうか?」
1人のカタストロフィア教の者が言う
「大丈夫です。王の望みとあらば……です」
「そうですか」
「【2758年、反乱を起こさぬ為、各国の王達が集い話す。だが、その話は一向に終わる事がないだろう。その間人々は、戦争が起こらぬ事を心で願い、怯え、1日一日を過ごすだろう。その願いが届き国々の王は争う事を無しと世界に告げ、その年平和であろう。だが、悪しき者の存在が世界に広まる事ある事なかれ】……と記されている!」
「お疲れ様です」
「これが私の仕事ですから」
「リュシェア様……」
1人の少年が話しかけてくる。その少年は私と同じ位の歳で私よりも身長が大きかった。
「なに?」
「悪しき者って一体……」
「それは、多分私にしか知らない者だと思う。……君が知っててもどうにもならないよ……。私がやらなくちゃいけないから……」
「……え?どういう事……!?」
「私の預言……タトロアに書いてあったこと……」
「……俺、助けに行くよ!悪びれた者を倒すんだ!」
「そう?ふふ。ありがとう」
「俺、シト!シト・ワイダス」
「……シト。古代の意味では…『助け』ですか。良い名前です」
「おう!必ず、カタストロフィア教の聖地…『ヤオト』に行くからな!」
「待っているわ」
シトの走り帰る姿を見ながら私は
「……仲間。そんな事も書かれていたような。シト…彼が私の仲間……。他にもいるのかしら」
「リュシェア様…そろそろお時間が」
「そうね。行きましょう」
私は彼らと共にこのカルマトトを出た。

一方その頃──────────────

「キロロが……消えた……だとっ!?どうやって!?……カタストロフィアァァァァァァ!!」
「……リューラか!?……キロロが逃げ出したか……。今の我にはどうする事も出来ない」
「……チッ」

「やはり、精霊共は馬鹿であったか。……ずっとリューラを監視してきて、僕が逃げないとでも思ったのかな?ハハハ!笑わせるよ!!」
キロロは薄汚いこのウィルビウスの世界を見て
「汚い地だ。僕が綺麗にしてあげないとねぇ。カタストロフィアが創った世界……か。僕とクロロが対立しなければこの世界をもっと早くから美しく出来たのかなぁ?それとも、僕が世界樹より産まれなければ良かったのかなぁ?でも、世界樹が僕を必要として生み出した……どういう願いなのかなぁ?……僕にはわからないけど、この地には『ヒト』という者が産まれたんだよね。その『ヒト』が汚したのかな?この美しいはずの世界を!『ヒト』なんて、自分の事しか考えない愚かな生き物だとリューラから聞いた……。まあ、さてこれからどうしたものか……。行き場を失ったが」
「君……困っているの?」
「お前は誰だ?」
「私はマナが物質化して『ヒト』という形になった者。私は自分で『マナ』と呼んでいる。」
女の子の容姿をしたマナという者は笑ってみせた。
「マナ……ね。僕はキロロ。世界樹の中……負の間から逃げ出した者だ」
「キロロ……。クロロの双子の?」
「ああ、そうさ」
「初めて見たなぁ」
「君はマナが集まって出来た集合体……。負の間とマナができる場……生命の間とは隣同士。会うことはない」
「そうだよね……。私って、おかしいよね…」
「そうなのか?僕はある時から負の間に閉じ込められているのだ。わかるわけがない」
「……。キロロってどうしてこんなところに居るの?」
「僕は負の間から逃げ出した。いずれにせよカタストロフィアに見つかる……だから、僕は見つからない場を探している」
「……そうなの。私に出来る事…。あ!」
「なんだ……」
「『ヒト』に成りすますとか、他のものへ変わるとか……」
「『ヒト』にだと?嫌だね。あんな私欲の生き物になど……。他のものって何なんだよ」
「うーん。そうだなぁ。ウィルビウスに体が馴染むまでの期間……」
「そうか、僕も非物質体になればいいのか!」
「キロロ?」
「そうだよ!……もっと早くから気付けば良かったんだ。……僕も非物質体に変わればカタストロフィアにも気付かれはしない。……マナ。ありがとう」
「……。」
マナは困惑した。なんといっていいかわからず、マナはその場に立ち尽くした。そして、キロロの形は消えた。
「キロロ……。私は合ってたのかな?私は『ヒト』として生きるよ。この体……ううん。マナが枯渇するまで……」
そして、この空間からマナの姿も消えた。
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