君の名を唄う
傘と一ノ瀬さん
仏壇の前に腰を下ろす。
「お父さん、お母さん、おはようございます」
どんなに忙しくても、必ず毎朝手を合わせる。
「こずえちゃん、お弁当忘れないようにね」
「うん。ありがとう、おばあちゃん」
お弁当を入れ、スクールバッグを肩にかける。
ローファーを履くと、いつものようにおばあちゃんが玄関まで見送りに来てくれる。
「あら、こずえちゃん。何かいいことでもあった?」
「えっ?」
「なんだか嬉しそう。好きな人でも出来たのかしら」
「ちょっと、やめてよ、もう。いってきます」
「ふふ、いってらっしゃい」
これ以上私の気持ちが読み取られないように、急いで家を出る。
おばあちゃんは、本当に昔からお世話になっているし、
私の1番の理解者でもある。
”あの日”から、ずっとーー