君の名を唄う
傘と一ノ瀬さん



仏壇の前に腰を下ろす。



「お父さん、お母さん、おはようございます」



どんなに忙しくても、必ず毎朝手を合わせる。



「こずえちゃん、お弁当忘れないようにね」

「うん。ありがとう、おばあちゃん」



お弁当を入れ、スクールバッグを肩にかける。

ローファーを履くと、いつものようにおばあちゃんが玄関まで見送りに来てくれる。



「あら、こずえちゃん。何かいいことでもあった?」

「えっ?」

「なんだか嬉しそう。好きな人でも出来たのかしら」

「ちょっと、やめてよ、もう。いってきます」

「ふふ、いってらっしゃい」



これ以上私の気持ちが読み取られないように、急いで家を出る。

おばあちゃんは、本当に昔からお世話になっているし、
私の1番の理解者でもある。

”あの日”から、ずっとーー


< 10 / 17 >

この作品をシェア

pagetop