君の名を唄う
「私も、一ノ瀬さんと一緒です」
「何が?」
「私も、歌に救われたんです」
一ノ瀬さんが紅茶を淹れながら、頷いてくれる。
ーーこの人になら、言えるかもしれない。
さっき一ノ瀬さんが私に話してくれたように、私も一ノ瀬さんに過去を打ち明けられる。
そんな気がした。
「私…両親が、いないんです」
一ノ瀬さんは、静かに紅茶を置くと、再び私の隣に腰かけた。
「2人ともーー…事故で、亡くなりました」