君の名を唄う
「いやー、1人で任せて悪かったな、佐倉」
「いえ、そんな」
「先生はなー、佐倉のこと、すっごく期待しているんだぞ。真面目で、努力家で、しっかり結果を残す。そんな佐倉の姿、ちゃんと見ているからな。だからーー」
「…ありがとうございます」
「あっ、おい。佐倉」
職員室を出ると、私は再び下を向いた。
「期待なんて……重い、だけだよ」
今にもあふれてしまいそうな気持ちをぐっと抑える。
目を閉じれば、彼の姿が蘇る。
私の声を、綺麗だと言ってくれた。
”ーードクン”
目を見て、悲しげに微笑んだ。
”ーードクン”
ひとつ。またひとつ。
心臓が大きく脈打った、そのとき。
「……雨…?」
ーーあの日と同じだ。
これまでの晴天からは考えられないような大雨が、突然降り出した。