プリテンダー
第2会議室を出た後は、別々に帰路に就いた。

電車に揺られながら、改めてさっきの出来事を振り返る。

場所をわきまえろって、杏さんから叱られたとこなのに。

なんで僕は、あんな所であんな事をしたんだろう?

女ってわからないなんて、わからないのは僕自身も同じじゃないか。

彼女の事は、好きだとか付き合いたいとか、これっぽっちも思っていない。

好きだから付き合って欲しいという告白は断っておいて、どうしてあんなふうに彼女の体を弄んだりするのか。

なんだかものすごい罪悪感で、自分自身のゲスさが気持ち悪くて、吐き気がする。

あんな事、もうこれっきりにしたい。

でももしかしたら、渡部さんは体だけでもいいからと、今後も僕との関係を求めて来るかも知れない。

好き合ってもいない相手とあんな事して、何が楽しいんだ?

頭ではそう思っているはずなのに、あの時僕は確かに、渡部さんをめちゃくちゃに乱してやりたいと思っていた。

やっぱりおかしい。

僕は激しく自己嫌悪に陥る。

そして自分が自分じゃないような、妙な感覚に苛まれながら電車を降りた。


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