プリテンダー
「けど、なんだ?」

ああもう…ホントに無知だな。

言わなきゃわからないか。

「たいていはイチャイチャしてます。」

「イチャイチャ…?」

「えーっと…つまり、飽きもせずキスしたり、セックスしたり?」

杏さんは真っ赤な顔をして、言葉を失ってしまった。

……こういうところ、面白い。

もっとからかって恥ずかしがらせてやろうか。

「人の多い場所が苦手なら、おうちデートでもしてみます?二人っきりで一日中イチャイチャして過ごしましょうか。」

「し…しない!絶対しない!!」

…だろうな。

一緒に暮らしているとは言え、僕らは恋人同士ではないし。

会社では上司と部下で、同じ家に帰ると偽の婚約者で同居人。

よく覚えてないけど、酒に酔った勢いで1度だけ過ちを犯してしまった事を除いては、僕と杏さんは男女の仲ではないって事だ。

「そもそも、これは私たちが付き合っているというアピールみたいなものだ。家の中では意味がない。」

「アピール…ですか?」

「言っただろう?私たちの粗を探そうと、どこで密偵に見張られているかわからないと。だったらそれを逆手に取るんだ。」

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