プリテンダー
なるほど。

それで突然デートしようなんて、柄にもないこと言い出したのか。

「だったら…思いきり楽しめる場所がいいですね。遊園地にでも行ってみますか?」

「行った事がないんだが。行き先は鴫野に任せる。」

「それじゃあ遊園地にしましょう。お弁当作りますね。」

こうして僕と杏さんの初デートの場所は、遊園地に決まった。

恋人同士のデートなのだから、もちろん敬語は無し。

お互いを名前で呼んで、手を繋いで歩く。

思いきり楽しむ。

これが僕の提示した、デートの条件。

杏さんは戸惑っていたようだけど、自分の言い出した事だから仕方ないと、渋々それを承諾した。



そして恋人ごっこをしている今に至る。




遊園地に着くと、杏さんは初めての遊園地に興味津々で、グルグル回る乗り物とか、凄い速さで走るジェットコースターを、目をキラキラさせて眺めていた。

幼い頃からお祖父様に厳しくしつけられたと言っていたし、普通の家庭の子供のように家族で遊びに行った事がないんだ。




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