プリテンダー
そういう僕も、小さい頃に両親が離婚してばあちゃんに育てられ、家族で遊園地に来た記憶はない。
記憶に残る初めての遊園地は、近所の友達の家族と一緒だった。
大きくなると友達や彼女と一緒に行ったりはしたけれど。
一緒に遊びに行った記憶どころか、僕には写真以外の両親の記憶さえない。
遠い記憶に微かに残っているのは、母親の『いい子にしていてね。』という言葉だけだ。
いくつかの乗り物に乗った後、ベンチに座って売店で買ったジュースを飲んだ。
「杏は高い場所とか速い乗り物とか、平気なんだね。」
「うん。面白い。」
「次は何に乗りたい?」
「あれ。」
杏さんは空中ブランコを指差した。
期待に目を輝かせる姿は幼い子供みたいで、思わず頭を撫でたくなるほどかわいい。
「じゃあ、ひと休みしたら乗ってみようか。」
「うん!」
杏さんが嬉しそうに笑った。
こんな無防備で無邪気な笑顔を見たのは初めてだ。
「杏、遊園地楽しい?」
「…すごく楽しい。」
「良かった。」
僕も楽しい。
本当の恋人ではないけれど、今だけでも杏さんを笑顔にできるなら、偽物の婚約者も悪くないかな、と思えた。
記憶に残る初めての遊園地は、近所の友達の家族と一緒だった。
大きくなると友達や彼女と一緒に行ったりはしたけれど。
一緒に遊びに行った記憶どころか、僕には写真以外の両親の記憶さえない。
遠い記憶に微かに残っているのは、母親の『いい子にしていてね。』という言葉だけだ。
いくつかの乗り物に乗った後、ベンチに座って売店で買ったジュースを飲んだ。
「杏は高い場所とか速い乗り物とか、平気なんだね。」
「うん。面白い。」
「次は何に乗りたい?」
「あれ。」
杏さんは空中ブランコを指差した。
期待に目を輝かせる姿は幼い子供みたいで、思わず頭を撫でたくなるほどかわいい。
「じゃあ、ひと休みしたら乗ってみようか。」
「うん!」
杏さんが嬉しそうに笑った。
こんな無防備で無邪気な笑顔を見たのは初めてだ。
「杏、遊園地楽しい?」
「…すごく楽しい。」
「良かった。」
僕も楽しい。
本当の恋人ではないけれど、今だけでも杏さんを笑顔にできるなら、偽物の婚約者も悪くないかな、と思えた。