プリテンダー
「鴫野くん…。」

「なに?」

「大好き…。」

渡部さんが火照る体で僕にしがみついた。

疼きが抑えられないのか。

渡部さんは、もっとしてと僕の耳元で囁いた。

「……そろそろ時間だ。戻ろうか。」

「鴫野くんは、いつも最後まではしてくれないね。」

乱れた服を直しながら、渡部さんは不満そうに呟いた。

「…しないよ。」

「それはここが会社だから?それとも私が彼女じゃないから?」

「両方当たってるけど…両方違う。」

「どういう事?」

ここまでしておいて、好きじゃないから、とハッキリ言うのは勝手すぎるだろうか。

こうして一緒にいる事も、好きでもないのにキスをして体に触る事も苦痛に思えてきた。

僕だってホントは…好きな人とだけしたい。

「……もう一緒に食べるのやめようか。」

「どうして?」

「ごめん。」

それ以上何も言えなくて、僕は渡部さんを残し足早に第2会議室を出た。



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