プリテンダー
なんでこんな事になったんだろう?

僕は矢野さんと食事をしようと思って来たはずなのに。

僕の隣では渡部さんが裸で寝息をたてている。

そんなに酔っていたわけでもないのに、どうしてこんな事になってしまったのか。

僕は散らかった頭の中を、必死でフル回転させた。




仕事の後、この前矢野さんと一緒に行った店に行くと、なぜか渡部さんがそこにいた。

矢野さん、謀ったな。

仕方なく黙って席に着いた。

「鴫野くん、久しぶり…かな。」

「ああ…うん、そうだね。」

気まずくて今すぐその場から逃げ出したいのを堪えながら、僕は目一杯平静を装った。


とりあえず三人で日本酒を飲みながら食事をした。

相変わらず女将さんの料理と地酒は美味しかったはずなのに、僕は渡部さんに何を言われるのかとビクビクしていて、前に来た時の半分もその味がわからなかった。

渡部さんは楽しそうに笑って、料理を食べながら日本酒を飲んでいた。


二時間ほど経った頃、矢野さんの携帯電話が鳴った。

これから友達が家に来るから、そろそろお開きにしようと矢野さんは言った。



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