プリテンダー
それから渡部さんは泣きながら僕の手を握って眠ってしまった。

渡部さんだってきっと、こんな事したってなんの意味もないってわかってる。

結局、胸に残ったのは後悔だけ。

僕はもう何も考えたくなくて、疲労感に抗えない体を横たえ目を閉じた。





渡部さんの寝顔には、無数の涙の跡が残っている。


こんなつもりじゃなかったのに。

こんな事はもうやめようって言って終わるはずだった。

どんなに好きだと言ってくれても、僕は彼女を好きにはなれなかった。

それなのに…。


僕はまた罪悪感と嫌悪感に押し潰されそうになりながら、渡部さんの部屋を静かに後にした。


夜のしじまに身を隠すようにして、ひたすら歩いた。


足も心も何もかもが重くて、このままこの闇に消えてしまえたらと、そう思った。





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