プリテンダー
ばあちゃんの家にいる間は、僕が食事の用意や洗濯などの家事をして、通院に付き添い、身の回りの世話をした。

就職して家を出てからはなかなか帰る時間がなかったから、僕はばあちゃんと久しぶりにゆっくり話した。


部屋の掃除をしている時に、古い写真を見つけた。

今よりずいぶん若いばあちゃんが、小さな女の子を膝に乗せて笑っている。

この子、誰だろう?

僕の会った事のない親戚の子とか、近所の子なのかな。

「ばあちゃん、この子誰?」

「ああ…昔勤めていた家のお嬢さんだよ。」

「ふーん…。」

ちょっと寂しげな目をしたその女の子は、誰かに似ているような気がした。



ほんの少し怪我の具合も良くなったとは言え、心配ではあったけど日曜の夜遅くに帰宅した。

僕が帰ると珍しく杏さんが部屋から出てきた。

「親御さんの怪我の具合はもういいのか。」

怪我をしたのがばあちゃんとは言わず、親が怪我をしたと僕が言ったから、杏さんはそんな言い方をした。

「おかげさまで…。」

「そうか…。」

会話は続かない。

だけど少しでも心配してくれていたんだと思うと嬉しかった。



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