プリテンダー
その後はもう何がなんだかわからないまま、僕は重役に呼び出され事情聴取を受けた。

この会社に企業スパイみたいな者が潜入していた可能性もあるし、僕自身もそれを疑われているようだ。

盗まれたのが僕の作ったメニューばかりだったから仕方ないけど、僕にはまったく身に覚えがない。

何度も同じような質問を受け、それに答える事の繰り返し。

犯罪者にでもなった気分だ。

課長と杏さんも、別室で取り調べを受けているようだった。

なんでこんな事になってしまったのか。

よりによってこの会社では地味だと言われた、僕の作ったシニア向けのメニューばかりが盗まれた。

その会社のターゲットである高齢者には需要があったんだろう。

ボツになったメニューはともかく、新商品の弁当は発売日を間近に控えているので、日配部門の各部署がてんやわんやになった。

工場のラインを止めたり、材料の仕入れを止めたり。

僕の知らないところで僕の作ったメニューが他社から発売されるなんて。



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