プリテンダー
入浴を済ませてリビングに戻ると、ソファーに座っていた杏さんが僕にビールを差し出した。

珍しい事もあるもんだ。

ビールを受け取り、少し間隔をあけて杏さんの隣に座った。

いつもは隣に座ったりはしないけど、今日はなんとなく少しでもそばにいたいと思ったから。


杏さんは何も言わずにビールを飲んでいる。

ローテーブルの上には既にビールの空き缶が3つも並んでいた。

どうしたのかな?

今日は飲みたい気分とか。

「杏さん、もうずいぶん飲んでますね。」

「鴫野も飲め。」

「いただきます…。」

まだ酔ってはいなさそうだけど、かなり速いペースでビールを煽っている。

大丈夫かな?

それからしばらく黙ってビールを飲んだ。

杏さんは4本目のビールを飲み干して、空いた缶をテーブルの上に置いた。

「鴫野がここに来て、どれくらいになる?」

「えーっと…2ヶ月…いや、もうじき3ヶ月かな…。ずいぶん経ちますね。」

「そうだな…。だけど…長いようで、あっという間だった…。」



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