プリテンダー
なんか、いきいきしてるな。

ばあちゃんが歳の割に元気でしっかりしてるのは、推理ドラマで脳を活性化させてるからなのかも。

ばあちゃんはさっきから一人でブツブツ呟いている。

こうなると長いんだ。

僕は急須にお湯を注ぎ、湯飲みに熱いお茶を淹れた。

それにしても社内の人間って…どれだけいると思ってんだ。

そんなの、まず一番に疑われるのは僕だろう。

試作室に頻繁に出入りする社員も別室に呼ばれて、いろいろ聞かれたと言っていた。

矢野さんは普段から交遊関係が広いから、他の人たちよりあれこれ聞かれたみたいだった。

…そういえば、昨日矢野さんが気になる事を言ってたな。

僕は熱いお茶をすすりながら、昨日矢野さんから聞いた話を思い出した。



昨日の夜、僕と矢野さんはまた例の小料理屋で酒を飲みながら食事をしていた。

ある程度空腹が満たされた頃、矢野さんが、そういえば…と声を潜めた。

「なぁ…渡部の事で変な話聞いちゃったんだけどさ…。」


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