プリテンダー
ばあちゃんは正面玄関にたどり着くと、事もなげに屋敷の呼び鈴を押した。

「はい。」

インターホンのスピーカーから、若い女の人の声がした。

「大旦那様はいらっしゃる?」

「あの…大旦那様はご入院中ですが…どちら様でしょうか。」

「そう…大旦那様は入院なさってるのね。あなたはメイドさん?」

「はい、あの…。」

若いメイドさんはばあちゃんの勢いに押され気味だ。

「今のメイドさんで一番偉い人はどなた?」

「久野 和代さんですけど…。」

「ああ、和代さんね。和代さんに、高野 弥栄子が来たと伝えてちょうだい。」

「は、はい…。」

インターホンが途切れて少しすると、60歳前後のメイドの女性が慌てた様子で正面玄関の扉を開けた。

「弥栄子さん!!お久しぶりです!!」

「久しぶりね。お元気?」

「ハイ、おかげさまで!」

さすが元女中頭、貫禄が違う。

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