プリテンダー
「なるほどな…。あいつの考えそうな事だ。」

あれ?

なんだかお祖父様は、騒動の真相に察しがついているみたいだ。

そして僕は、杏さんが本当は、好きでもない決められた相手との結婚を望んではいない事を話した。

それを聞いてお祖父様は僕の顔をじっと見た。

「杏は君との結婚を望んでいたんだろう?」

……違う。

僕は本物の恋人なんかじゃない。

これ以上お祖父様を騙し続けるのは心苦しい。

本当の事を話してしまおう。

「僕は…杏さんに頼まれたんです。市来さんとの縁談を白紙にするために、しばらく婚約者を演じてくれと…。」

「あれは…芝居だったのか?」

お祖父様は呆然としている。

僕は深々と頭を下げた。

「騙すような真似をしてすみませんでした。」

何を言われても仕方がない。

杏さんに頼まれたとは言え、僕が嘘をついたのは事実だ。

「二人で暮らしてうまくいくのかとお祖父様に言われてから、僕と杏さんはいつ様子を見に来られても疑われないように一緒に暮らしていました。」

「なんと…そこまで…。」


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