プリテンダー
僕はきちんと姿勢を正し、まっすぐにお祖父様の目を見た。

「はい。僕は杏さんが好きです。この先もずっと、杏さんに僕の作った料理を食べてもらいたいです。」

「その言葉に嘘はないんだな?」

「ありません。」

僕がキッパリと言い切るとお祖父様は大きくうなずいて、黙って部屋の入り口に控えていた男の人に手招きをした。

執事?秘書?SP?

なんだかよくわからないけど、お祖父様に仕えている人らしい。

その人がそばに駆け寄ると、お祖父様は何やら耳打ちをした。

一体何を話しているんだろう?

何度かうなずいた後、話が済んだのかその人は頭を下げて病室の外に出ていった。

お祖父様は不敵にニヤリと笑った。

「あの若造め。有澤の名に泥を塗ってくれおって…。さて、どうやって泣かせてやろうかの…。」

…お祖父様、やっぱりめちゃくちゃ怖いんですけど!!


でもとりあえず、僕が辞世の句を詠む必要はなくなったみたいだ。




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