プリテンダー
「ところで裕喜くん、さっきの話なんだが。」

「はい。」

「こちらの会社で商品化した鴫野くんのメニューのデータを、ビジネスとして正式に譲ってくれんだろうか。鴫野くん本人も一緒に。」

……え?

今なんておっしゃいました?

「うちの鴫野も…ですか?」

「聞いたところによると、彼の実力がおおいに発揮出るのは、高齢者向けの商品だそうじゃないか。」

「そのようですね。」

「鴫野くんにはうちの会社でぜひ働いてもらいたい。どうかね?」

お祖父様と裕喜社長が同時に僕の方を見た。

どうかね?って突然言われても…。

これっていわゆる、ヘッドハンティングとか言うやつ?

「突然そうおっしゃられても…。」

予想外の展開に僕はオロオロするばかりだ。

「そうか。では杏との縁談も含めて前向きに検討してくれ。」

「……ハイ?」

「君は杏の婚約者なんだろう?」

「えっと…。」

なんと答えれば良いのやら。

これには杏さんも慌てている様子だ。

「君は杏の事が本当に好きなんだろう?」

「……っ!!」

自分の口から伝えた事もないのに、まさか杏さん本人の前でお祖父様に暴露されるとは!!



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